着物の洗いは大きく分けて2種類


○水性の洗い

文字通り水を使って洗う手法

代表的なのが洗い張りになります。着物を解いて反物状態にしてから全体を水や洗剤を使って洗います。軽度の油性汚れにも効果はあり、水性のしみも洗い流してくれるので、汗などにも効果的です。洗いの洗浄力は1番だといえるでしょう。

変色や特殊なしみなど落ちないものに対しては別途でしみ抜きや色補正などの加工が必要になる場合はあります。また、後に仕立てが必要になってくるので、頻繁に利用するには費用も大きくなると悩ましいところではあります。

○油性の洗い

有機溶剤を使って洗う手法

生洗い、丸洗い、ドライクリーニングと呼ばれる洗いは、呼び方は様々ですが油性の洗いです。主な目的は軽度の油性汚れを落とすことで、よくつくファンデーションや皮脂汚れなどには効果があります。また、解かないで済むところがお手入れでよく使われている理由でもあると思います。ただし、軽度の油性汚れ以外は落ちないとも言えるので、当然汗や飲み物その他水性のものも落ちないのが実際のところです。

なのでそれらに対しては、別途でしみ抜きが必要になります。再度仕立てがないので通常のお手入れとしてはこちらの選択肢になることが多くなると思います。


しみ抜きの必要性

しみ抜きの目的はしみや汚れを落とすことなので、油性水性どちらも当てはまります。ひとつずつ手作業で処理する必要があるので、しみの種類によってはそのしみに合わせた作業を使い分けながら進めていきます。また、種類も何がついたかわからないこともよくありますが可能性を探りながら作業します。洗いだけでは直らないものは、どうしてもしみ抜きで直す必要が出てきます。そしてお手入れの際に必ずしも生洗いや丸洗い、ドライクリーニングをしなくてはならないわけではありません。お手入れで必要な時には使い、必要ない時にはしみ抜きだけで済むこともあります。

 

当店は基本的に、洗い作業に油性の生洗い、その他の汚れやしみにはしみ抜きで対応する形になります。

時には、状態や作業工程において洗い張りのような水性洗いが必要になる場合もあります。

 

例えば、着用時にだいぶ汗をかいてしまった場合、お手入れに出す際【生洗い、丸洗い、ドライクリーニング】すれば大丈夫と油性の洗いお手入れだけを注文してしまうことをよく聞きます。これは大きな間違いで、仕上がったものには汗は残ったままです。水性のしみに対して油性の洗いではほとんど効果がありません。洗うとはいっても何を使って洗うのか、どんな効果があるのかは意外と知られていないのかもしれません。お手入れに出す際はしみ抜きとの併用をお勧めいたします。